■メランコリイ■

 
光が収まって目を開けたとき、俺は目の前の光景に思わず吹き出してしまった。
目に前には俺と同じくらいに成長したキラの姿があった。彼は悪戯に成功した子供のような顔で立っている。
クルーゼやラクスは呆然としている。
ただ青い花びらだけが、俺たちをあざ笑うかのようにひらひらと舞っていた。

「本当に、キラにはすっかり騙されましたわ。」
数日後、俺たちは約束どおりクルーゼから莫大な謝礼をもらって、小奇麗なアパートに引っ越した。もちろんキラも一緒だ。
「僕も、確信はなかったんだよ。なんとなく枯れることはないんじゃないかな〜とは思ってたけど。それに、言わないほうがアスランにはいいと思ったんだ。持ち主には一番に愛されたいしね。」
その言葉にラクスが一瞬寂しそうな顔をしたことに気付いたが、キラは気付かない振りをした。こればっかりはどうにもならないのだ。それに最近ラクスはその寂しさを、アスラン相手に発散することを覚えたらしい。
「それにしても、あのときのアスランは本当に素敵でしたわ。『世界で一番キラのことを愛している!』私も一度でもいいので、どなたかに言われてみたい台詞ですわ。」
「ラクス!もうその話はやめてくださいと何度言ったら分かってくれるんです!」
「あら、わたくしは褒めているんですのよ?そうですわよね、キラ?」
キラは、そのときを思い出すとうれしいし、俺が真っ赤になるのを見るのが楽しいらしく声を上げて笑っている。
「キラ!お前までなんだ!」
いつまでも笑い転げているキラに、いつまでもそのキラに腹を立てている俺たちをなだめるのは、いつもラクスだ。自分が話を振ってくるくせに、そんなことは知りませんわ、という顔で言葉を放つ。
「さあさあ。アスランもキラも、いつまでもこんなところでゆっくりはしていられませんわ。引きこもっていては人間だめになってしまいます。お仕事を探しましょう。」
ラクスが勢いよく開けた窓からは、あのときの花びらのように美しい色をした青空が広がっていた。

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